セミアクティブRFIDとは?
2026.04.16
国産セミアクティブRFIDメーカー、RFIDやIoT技術で現場の安全・効率化を実現
2026.04.16
セミアクティブRFIDの仕組みと、パッシブ/アクティブとの違い。マトリックスのPOWERTAGがどのような技術で、なぜレース計測・入退管理・安全管理などで使われているのか。LFトリガー磁界・トリガーID方式・領域制限(Digital Space Coding)といった独自技術が、現場でどのように働くのか。さらに、大阪・関西万博2025で展示した「災害時要救助者探知システム」への応用事例まで整理します。
セミアクティブRFIDとは、タグ内部にバッテリーを内蔵しながら、読取側からの働きかけをきっかけに動作するRFID方式です。英語圏では「Semi-Passive」や「BAP(Battery Assisted Passive)」とも呼ばれます。マトリックスのPOWERTAGでは、LFトリガー磁界を受信したときだけタグが起動・発信する仕組みを採用しています。
アクティブタグの長い通信距離と、パッシブタグの省電力性を兼ね備えた方式であり、入退管理、安全管理、スポーツ計測、見守りなどで活用されています。ただし、実際の検知精度や通信距離は、設置環境などの条件によって変わります。
RFID(Radio Frequency Identification)は、電波を利用して人やモノを非接触で識別・追跡する技術の総称です。バーコードや磁気カードと異なり、離れた位置から複数のタグを同時に読み取れる点が特長で、在庫管理、物流、交通、医療、セキュリティなど幅広い産業で使われています。RFIDタグは電源の有無と動作方式によって、パッシブタグ・アクティブタグ・セミアクティブタグの3種類に大別されます。
| セミアクティブタグ(弊社製品) | アクティブタグ | パッシブタグ | |
|---|---|---|---|
| 電池 | あり | あり | なし |
| 通信距離 | 長い | 長い | 短い |
| 特徴 |
・磁界を検知した時のみ電波を送信 ・磁界のIDで場所を特定 ・電池が長持ち(交換が必要) |
・常時発信タイプが一般的 ・電波の強度や往復時間で場所を特定 ・電池の交換が必要 |
・リーダ・ライタから給電して送信 ・半永久的に使用可能 |
| 用途 |
・所在管理/入退管理 ・登下校見守り(管理) ・離院検知/盗難検知 ・レースタイム自動計測 ・重機・フォークリフトの接近検知 |
・所在管理/入退管理 ・登下校見守り(管理) ・モノの紛失防止 ・重機・フォークリフトの接近検知 |
・商品・在庫管理 ・パレット管理 ・万引き防止 ・入退管理 ・乗車カード |
パッシブタグは電池不要で安価ですが、通信距離が短く、複数タグの同時読み取り精度にも限界があります。一方、アクティブタグは常時電波を発信するため通信距離は長いものの、電池消耗が早く、隣接エリアとの信号干渉(誤検知)が起きやすいという課題があります。
セミアクティブタグは、こうした弱点を抑えやすい構造を持っています。普段は電波を出さず休止しているため電池が長持ちし、特定のエリア(トリガー磁界)に入ったときだけ自らの電源で駆動して電波を発信します。つまり「必要な場所で・必要なときだけ・自分の電力で応答する」ため、長寿命と高精度の両立を図りやすい方式です。
株式会社マトリックスは、1993年に自転車ロードレース用の非接触ICタグ開発に着手し、1999年にセミアクティブRFIDタグを製品化したパイオニア企業です。以来30年以上にわたり、自社設計・自社製造でセミアクティブRFIDシステム「POWERTAG」シリーズを展開しています。
POWERTAGは、LFトリガー磁界を活用し、タグが必要なタイミング・場所だけで動作する仕組みを採用。使用条件によってはバッテリー寿命最長3年※と高精度な位置識別を両立します。
※23℃の環境下で、1日の発信累積時間が1分間までの使用状態で、ノイズ磁界がない場所での使用を条件とする計算値です。使用条件・環境条件により変化します。
POWERTAGは、LFトリガー磁界の中に入ったときだけ起動して電波を発信します。磁界の外では完全に休止しているため、常時発信型のアクティブタグに比べて電池消耗が少なく、電池交換も簡単に行えます。
POWERTAGを特徴づける技術のひとつが「トリガーID方式」です。トリガー磁界には場所情報である「エリアID」が埋め込まれており、タグは受信したエリアIDと自身のタグIDをセットで発信します。このため「どのタグが・どの場所を通過したか」を正確に判別でき、隣接エリアのタグを誤って読み取るリスクを低減します。受信データを時系列に処理することで通過方向(入室/退室)の判定も可能なため、入退管理に適した方式です。
POWERTAGの基本技術です。特定のエリア(トリガー磁界)を通過したことを認識し、高速で移動する複数の対象を同時に読み取ります。自転車ロードレース(ジャパンカップ、ツアー・オブ・ジャパンほか)やマラソン・駅伝(大阪国際女子マラソン、全日本実業団駅伝〈ニューイヤー駅伝〉ほか)、競走馬調教タイム計測、JKA日本競輪学校など、高速移動する複数対象の通過計測に対応してきた実績があり、この技術が入退管理や安全管理にも活かされています。
トリガー磁界にエリアIDを付与し、複数の人やモノの「出入り・動態」をリアルタイムに認識する仕組みです。広い出入口や複数の建屋にまたがるエリアでも、誰が・いつ・どこを通過したかを記録できるため、工場・倉庫のハンズフリー入退管理や災害時の所在確認に活用されています。
高感度タイプのタグは受信感度が高いため、小さなトリガーコイルでも十分な検知エリアを形成できます。大がかりなアンテナ設置が難しい場所や、1つのドアだけを管理したい場面など、広範囲の検知を必要としないケースでシンプルかつ低コストな機器構成で運用できます。
2つのトリガー磁界が近接すると、通常は磁界同士が重なり、位置の判別精度が落ちます。POWERTAGの「領域制限(Digital Space Coding)」は、磁界の信号をデジタル符号化することで、この重なりの影響を抑える技術です。ドアの内側と外側に異なるエリアIDを割り当てて入退室を判定したり、片側のエリアを消滅させて検知範囲を制御したりできます。これにより、通路幅が狭い工場や、エリアが密集した建屋内でも精度の高い所在管理を実現しやすくなります。
領域制限技術は、フォークリフト・重機向け衝突事故防止支援システム「ヒヤリハンター」にも応用されています。重機の周囲4方向にトリガー磁界を出力し、作業員の接近位置と人数をタブレット端末にリアルタイム表示。運転席から死角にいる作業員の位置と属性(熟練者/一般)まで確認できます。
実際の現場で導入・運用されている事例です。LFトリガー磁界による検知エリアの制御が、この運用を支えています。
2025年10月、大阪・関西万博2025の大阪ヘルスケアパビリオン「リボーンチャレンジ」において、マトリックスは株式会社ミマモルメ・旭電機化成株式会社との3社共同で、セミアクティブRFIDを応用した「災害時要救助者探知システム」を展示しました。レースや入退管理で培ったLFトリガー磁界技術を、災害救助という新たな領域に応用した事例です。
地震や津波などの大規模災害では、発生から72時間を過ぎると生存率が急激に低下するとされています。瓦礫の下に埋もれた被災者の位置を迅速に特定することが、救助活動の最大の課題のひとつです。
このシステムは、腕時計タイプの「バイタルセンサー+RFIDタグ」と、LF磁界を活用した「RFID探知機」で構成されています。要救助者がタグを装着していれば、意識を失っていても探知機がピンポイントで位置を特定でき、同時に心拍などのバイタルデータも受け取ることができます。数メートル離れた瓦礫の下でも反応するため、従来は困難だった早期発見・早期救助の実現を目指した研究開発プロジェクトです。
このシステムの基盤にあるのが、POWERTAGで培ったLFトリガー磁界の特性です。LF磁界は金属以外の障害物(コンクリート・木材・プラスチックなど)を透過しやすく、瓦礫の下にあるタグにも届きやすい性質があります。また、タグ側は磁界を受信したときだけ起動する省電力構造のため、長期間の待機にも耐えます。
POWERTAGは、自転車ロードレースやマラソンのタイム計測で培った「高速・多人数の同時検知」技術を基盤に、工場・倉庫・建設現場の入退管理や安全管理、学校の登下校見守り、医療施設の徘徊検知など、幅広い分野で導入実績があります。
タッチレスパーキングシステム、ハンズフリー車両入退管理システム(トラック・バス)
競馬調教タイム計測システム、ゴーカートのタイム自動計測システム、パーソナライズドガイドシステム
無断外出・離院検知システム、赤ちゃん連れ去り防止システム、巡回記録自動化システム、登下校見守りシステム
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